第13章 差し引きゼロ
貴)「もう…びっくりした…」
ぺ)「いやー、俺もびっくり。
こんなに早く気づかれるとは思ってなかった…」
“ロー”の姿をしたペンギンさんは少しつまらなさそうに言ってベットに腰をかける。
ぺ)「なんでわかったの?」
どことなく薄笑いを浮かべるペンギンさんの質問に目を伏せた。
もちろん、昨日のことを気にしていないのもあったけど。
貴)「………名前呼んだから」
ぺ)「え?」
貴)「ロー、私のことクレアって呼んでくれたことないの。」
自分で言うのが悲しくなるような理由に私は頰を膨らませた。
ぺ)「うわあ、船長マジか」
私は一つだけため息をつくと体を起こしてくつくつと喉を鳴らして笑うペンギンさんの隣に腰掛ける。
…でも、昨日のこともあるせいか隣に“ロー”がいると思うと少し気まずい。
貴)「能力解かないの?」
自分が尋ねた後にふと考えた。
顔立ちも仕草も声色も口調も、何もかもローのもの。
…ペンギンさんの能力は何?
コピコピの実は私が持ってるから……
ぺ)「いや、能力じゃないよ」
そう答えたペンギンさんを見る。
すると“ロー”の目がこちらを向いて、
ぺ)「これが俺の顔」
確かにそう言った。