第13章 差し引きゼロ
きっと段々険しくなっているであろう私の表情とは裏腹に、
目の前の“ロー”はイビツに口元を歪めて笑う。
貴)「ねえ、誰。
……どうやって入ったの?」
自分で口にして背筋に冷や汗が流れる。
だって私、まだ部屋から外に出ていない。
ローの格好をして“潜入”したならわかるけど、
もし“突破”したなら……皆は?
ローは?
船内の状況が、何一つわからない。
?)「…俺は元から居た」
楽しそうに笑いながらそう言った。
言っていることが理解できない。
元から…?
貴)「テオドールの時から忍び込んでた…?」
先日までいた国の名前をあげる。
だけどその仮定も首を振って否定されると“ロー”じゃない声が聞こえた。
?)「なんだ、船長じゃないってすぐ気付いたからバレたかと思ったけど…
俺とは気づいてくれないのか。」
その声に口を開ける。
貴)「ペンギンさん……?!」
ぺ)「あーたり。」
そしてまた“ロー”が楽しそうに笑った。