第13章 差し引きゼロ
朝目を覚まして最初に見えたのは天井。
起き上がって辺りを見渡して、床の上で寝ていることに気づく。
貴)「…そのまま寝ちゃったんだ」
床に落ちているバラバラになった写真と紙を見て昨夜のことを思い出してぐっと喉を鳴らした。
部屋にローはいない。
会ったら、何て言ったらいいんだろ。
なんで、って怒る?
ごめんなさい、って謝る?
…いっそ、何もなかったことにする?
写真と紙を集めながらぐるぐると考えて、目を伏せた。
もう何を言ってもダメかもしれない。
それでもずっと部屋に閉じこもっているわけにもいかないから、集めたものを隠してそっと部屋を出ようとドアノブに手をかける。
…と。
貴)「わ…っ!?」
普通の重さよりだいぶ軽く扉が開き、思わず声を上げた。
開いたドアの向こうにはローがいて。
恐らく同じように扉を開けようとしていたのか少しだけ驚いた顔をしていた。
あまりに急すぎて固まる。
貴)「…お、おはよう」
ロ)「…ああ
早いな。」
貴)「えと…今起きた」
ロ)「そうか」
ローが普通に話しかけてくるから普通に返す。
なかったことにしようとしてくれてるのか、ローから昨日の様な殺気は一切感じられなかった。
…でも、これでいいのかな。
ローの優しさに甘えたままで……