第13章 差し引きゼロ
ロ)「……返せ」
貴)「やだ、なんで捨てないとダメなの?
そんな簡単に捨てていいの?
それともローにとって、これは重いの?
それなら…
そんなに重いなら、私が持つ…!」
意を決して声を出す。
手の中の紙を少し強く握り、ローの眼を見る。
ロ)「……ろ」
小さく何かを呟いたローの眉間にぐっと皺が寄り、
手にチリッと痛みが走った。
それと同時に手に持っていた紙がバラバラになって宙を舞う。
再び息を荒くさせるローが手に持っていたのは刀で。
それを見て、私が守りたかったものを、
…ローの大切なものを。
斬り刻んだことを悟った。
ロ)「黙ってろ!!!
お前には関係ない話だ…!」
険しい顔で私を睨む。
ローの怒声に泣きそうになった。
関係ないって、何で。
昔私が独りだった時、助けてくれたのはローだったのに。
私は側に居ることしか出来ないの?
側に居れるのは、“存在”だけ?
力になりたいと思うことしか出来ないの?
そんなの、ローにとって
私は“何でもない”みたいじゃんか。