第13章 差し引きゼロ
ロ)「…忘れろと言ったよな?」
息を整え、本を閉じたローが改めて私を見る。
まだ血色は悪いままだけど、その目は今朝以上に殺気を含んでいた。
貴)「でも、」
反論しようとした口を閉じる。
今朝、写真を見て思った。
ローのことを知りたい。
でも、こんな中途半端な行動はローからしたら同情以外の何物でもない。
何を言えばいいのかわからなくなって、黙っていた。
ロ)「どこにある」
そんな私にローは冷たく言葉を吐く。
言葉は少ないけど、多分一緒に入っていた写真と紙のことだと思う。
でも、あれは、捨てたらダメ。
ローの過去に何があったのか、全然知らないけど。
心の何処かで誰かがそう告げている気がする。
そう思って私は目を伏せたまま首を横に振った。
それと同時にローの機嫌が悪くなるのを肌で感じる。
ロ)「チッ……“room”」
ローが部屋が入る程のroomを広げる。
ロ)「“スキャン”」
機嫌の悪い声でそう告げるとローの手には隠したはずの写真と紙が現れた。
貴)「…っ、ねえ、ロー、まって」
私が声をかけるのも虚しく、ローは手にした写真を手で破った。
貴)「っ、ダメ…!!」
写真の中で笑う幼い頃のローが裂けると、思わず泣きそうな声が出る。
その勢いでローの手から紙を取った。