第13章 差し引きゼロ
貴)「っ、本当デリカシーないっ!
いいの!もう!服の整理したいからちょっと部屋の外出ててよ!」
ロ)「は?ここは俺の部屋だ」
貴)「知らない!
今日買ってきた本でも運んでくれば?!」
逆ギレみたいになったけど、とりあえず怒ったので怒りに任せて追い出す。
背中を押され、不満そうに首を傾げながらローが部屋を出て足音が遠ざかるのを聞くと私はベットから手探りで紙と写真を出した。
続きを読みたかったけど、いつ帰ってくるかわからないため諦めることしか出来ず。
特にいい隠し場所が思いつかないから隙間のない本棚の本と本の間にどうにかして隠した。
新しい本を入れるであろうスペースは別にあるし、今度こそ大丈夫…なはず。
もう寝る、って言ってたし明日ゆっくり隠し場所を探そう。
そう思ってローを待っていると随分ゆっくりとした足音が聞こえてきた。
多分ローだと思って部屋の外を覗くと、本を読みながらこちらに向かってくる姿が見える。
その姿に少し呆れたけど、あまりに真剣な表情で本を見てるから少し戸惑う。
貴)「読みながら歩いてると危ないよ?」
ロ)「…ん」
殆ど無反応に等しい返事をされ、横から本を覗くも何一つわからない。
ローが読んでいるのは分厚いページ数の中の初めの方で。
貴)「…今から読むの?」
全てを読もうとしたら夜が明けそうだった。
ロ)「ああ」
貴)「もう夜中だよ。明日じゃダメなの?」
ロ)「新しい症状が出てる。」
ローの顔をちらりと見上げる。
似た様な目を昼間に見たのを覚えていた。
何を考えているのかわからない目で。
『知らないものがある方が怖いだろ』
あなたはまた、悲しそうな声を吐く。