第13章 差し引きゼロ
ぺ)「で、なんで髪の毛濡れたままなの?
ドライヤー壊れてた?」
一通り笑ったのか、深く息を吐いてからペンギンはいつも通りの様子で質問する。
貴)「ローが来たから…」
ぺ)「タオルは?」
貴)「ローが来たから…」
少し念がこもった言い方になると、ペンギンは「何をやったんだ」と言いたげな顔で笑い、少し待つよう告げると近くの自室からタオルを取ってきてクレアの頭を拭く。
ぺ)「風邪ひいたら怖いから。
ま、もし風邪をひいても俺が良い風邪薬調合してあげるけどね」
貴)「あ、ありがとう…」
どこか恥ずかし気に笑うクレアを見てペンギンは隠れていない口元で笑顔を見せた。
ぺ)「そういえばクレアちゃん達ご飯食べてきた?
大体の奴はさっきの島で済ませて来たんだけど…」
貴)「うん、食べてきたよ」
ぺ)「へえ、どこ行ったの?」
貴)「凄くオシャレなカフェ屋さんがあったんだけど…
ローが…白米がねぇって言って……
…………カツ丼屋さん」
乾いた笑みを浮かべるクレアが口にした言葉にペンギンはまた盛大に笑う。
ぺ)「本当乙女心わかってないな…
まあ船長らしいけど」
貴)「ペンギンさんは何食べてきたの?」
ぺ)「パン。」
貴)「……パン?」
ぺ)「パンが恋しいんです。」
1ヶ月程この船に乗ってみたらわかるよ…とペンギンはどこか遠い目で語った。