第13章 差し引きゼロ
〜浴室前〜
貴)「あれ、ロー。
会議もう終わったの?」
ロ)「…」
その後着替えの服を持ち浴室に向かったローの思惑通り、クレアは浴室にいた。
しかし想定外なのは、既にお風呂から上がっていること。
雫の垂れる髪から今日買ってきたシャンプーの香りがすればローは眉間に皺を寄せる。
貴)「えっ、何…
お風呂遅かった?」
クレアは会議を聞いていたのをバレてないと思っているため、辻褄を合わせようと急いでお風呂に入ったのだが、
ローからしては思っていることは逆だった。
機嫌の悪いローにクレアは心配そうに尋ねると、ローはそのままの表情で口を開いた。
ロ)「いや…随分と早風呂だな。
月経か?」
ローの口から出たデリカシーの欠片もない発言にクレアは顔を赤くさせ、持っていたバスタオルをローに投げつけてそのまま風になり、ローの前から姿を消した。
〜廊下〜
貴)「もうっ、なんであんなにデリカシーないんだろ…!
…でも早い、ってことはやっぱり会議聞いてるのバレてたのかな…」
浴室から離れた廊下を歩き、唸っていると角で出会ったペンギンに驚いた顔をされる。
ぺ)「あれ、クレアちゃんもうお風呂上がったの?」
貴)「…私入ったの、会議前なんだけど…」
ぺ)「え、ああ…そうか。
それならこのくらいの時間か」
貴)「…やっぱりバレてた?」
ペンギンが2回ほど自分を納得させる様に頷く姿を見てクレアは恐る恐る聞いてみる。
ぺ)「まあ、それなりに」
すると予想通りで希望に沿わない答えが返って来て、クレアはため息をついた。
貴)「はぁ…せっかく急いで入ったのに…」
ぺ)「船長と会った?」
貴)「うん。
お風呂上がったら浴室前にいたから…あ、待たせてたのかな?」
それだったら申し訳ないことしたかも…と悩むクレアを見て、ペンギンが盛大に吹いた。
貴)「え、何?!」
ぺ)「いや、なんでも…」
くつくつと喉を鳴らすペンギンを見てクレアはただ首を傾げることしか出来なかった。