第13章 差し引きゼロ
貴)「…うん」
シャチさんの真剣で、それでいてどこか穏やかな様子に答える様に小さく頷いた。
そんな私を見てシャチさんはサングラスに触れ、外す。
貴)「…!」
暗い色のサングラスの下から現れたのは、
アクアとエメラルドの瞳。
俗に言う、オッドアイ。
シ)「……変かな?」
何の反応もない私に、シャチさんが困った様に笑った。
貴)「っ、そんなことない!
凄く綺麗……」
どこかぼーっとしていた意識を戻すと慌てて首を振り、力強く否定する。
その慌ててた様子が面白かったのか、シャチさんは笑った。
シ)「あはは、…ありがとう。
クレアちゃんならそう言ってくれるかなって期待してた。
…皆、この目を見たら気味悪そうな顔するから、隠してるんだ。」
悲しそうな表情。
でもどうしてもその眼に目が行ってしまう。
アクアの左眼。
エメラルドの右眼。
どちらも綺麗な宝石の様に。
傷一つなく、シャチさんの目にハマっている。
…そう、傷が、一つもない。
その“眼”には。
右目の周りには、斜めに斬られた跡が二本。
左目の周りにも、目頭や目尻に傷がある。
それなのに、眼には傷がない。
まるで、不思議な力で守られているように。
悲しそうに呟いたシャチさんの言葉と、その表情を見て。
もしかしたらシャチさんは昔、
故郷で迫害を受けていたのかもしれない。