第13章 差し引きゼロ
シャチさんの言葉を試すように、
モデルの人の姿を借りて、ローの頰にキスをしてみた。
バレてただけかもしれないけど、誘いに乗らなかったし、
私の姿に戻って、頰にキスをしても。
貴)「…頰、拭わなかった」
シ)「ん?なんて?」
嬉しくて、思わず口から言葉を漏らすと慌てて口を塞ぐ。
聞き返されても返事をせずに口を塞ぎ、顔を伏せているとシャチさんが顔を覗かせて来た。
シ)「あれ〜?
そういえばどうやって確かめたのかな〜?」
ちらりと視線を向けると、にやにやとした顔がこちらを向いているのが見える。
貴)「……内緒」
小さな声で返事を返しながらその目と合わないように顔を逸らした。
すると後ろから腕を回されて、私の腹部にシャチさんの手が触れる。
シ)「おーしーえーてっ!!」
その言葉と一緒に腹部にあった手が動き、くすぐられる。
貴)「ちょ、っ、あはははっやめ、やめてっ」
あまりにくすぐったくて、笑いながら逃れようとするけど後ろから抱きしめるようにくすぐられてるから、逃げるに逃げれない。
シ)「えー、教えてくれる〜?」
貴)「っ、ふふ、教えるっから…!!」
じたばたとあばれ、一緒になって笑う。
その勢いでバランスを崩して一緒に倒れたけど、それすらも可笑しくて顔を見合わせて笑った。