第13章 差し引きゼロ
ロ)「“room”」
瞬きをすると、目の前の景色が大きく変わった。
花の香りがふわりと香る。
ローに連れてきてもらったのは、中心島から見て北東にある第一島。
花が有名なこの島では、色とりどりの花が咲き誇っていた。
貴)「すごい…本当に色々な花があるんだね」
種類の多さに、ずっとキョロキョロしてしまう。
地に咲く花、水面に咲く花、木に咲く花。
珍しいのは氷に咲く花に、宙に咲く花。
ロ)「で、必要なものはなんだ?
ここには花しか置いてないが」
ここへ来る前、行きたいところを尋ねられて欲しいものがあるとこの島を指した。
貴)「うん、花が欲しい!」
ローの質問に笑って答えると近くのお店を指差した。
するとローはわずかに眉をひそめる。
ロ)「別にいいが…必要か?」
貴)「多分1番必要。
ローの部屋、寂しいんだもん」
必要な家具と本しか置いていない部屋。
花を飾るくらい、してもいいと思う。
ロ)「…好きにしろ」
ローの許可に喜び、近くのお店に入ると店員のお姉さんに声をかけられた。
「何かお探しでしょうか?」
貴)「特に…何かオススメはありますか?」
ちらりとローを見ると、入りたくないのかお店の前の椅子に座っていた。