第13章 差し引きゼロ
買い物を済ませて人口密度の高いショッピングモールから出る。
貴)「あんなに本買ってどうするの…」
購入した商品を“お運びロボ”に船まで運んで貰っているから今手元に荷物はないけど、先ほどローが購入していた数十冊の分厚い本を思い出して眉をひそめた。
ロ)「聞くが本に読む以外の価値はあるか?」
貴)「それはそうだけど…
全部医学の本?」
ロ)「ああ」
ローは簡単に答えるとこの国の地図を広げて手渡してくれる。
貴)「ローはすごいお医者さんなんでしょ?
まだ勉強することがあるの?」
受け取った地図を見て行きたい場所を探しながら、何となく気になって視線は手元の地図まま尋ねてみた。
ロ)「俺は全知じゃないからな。
知らないものがある方が怖いだろ」
ローの言葉に顔を上げた。
思わず口は開けたままだった。
特に感情が読み取れない横顔がこちらを向く。
貴)「知識欲、ってやつ?」
ロ)「そんなものだ」
目が合うと思わず笑って冗談っぽく言う。
言いたいことは、そんなことじゃない。
思わずその声色に圧倒された。
何でそんなに悲しそうな、弱々しい声で。
知っている言葉を吐き捨てるの。