第13章 差し引きゼロ
ローはでんでんむしの通話を切り、内ポケットにしまうと隣に人の気配を感じる。
「ねえお兄さん、
近くに美味しそうなカフェがあったんだけど、どうかしら?」
ローは視線だけを向ける。
声をかけてきたのは、綺麗な足を主張するような短いスカートに、体のラインを隠さない服を着た女性。
そして服の主張を受けるのは整った顔に、スタイルの良い体型。
だれから見ても、美人と言えた。
ロ)「興味ねぇな」
しかしローはため息をつくような声で返事をする。
すると女性は少しムキになったように、ローの頰に柔らかい唇でキスをする。
「……ね?」
少し上目遣いで、甘えたような声。
きっとそこら辺にいる男性なら、鼓動の音がうるさくなるだろう。
しかしローは口づけを受けた頰を腕で拭き、キツい目で睨みつける。
ロ)「ふざけてねぇでさっさと元の姿に戻れ。
目立つ格好をするな」
「うわ、女性からのキスを拭うとか最低!
しかもこんなに綺麗な女の人のを!」
ローの行動に、先程までとは似つかない言葉遣いで騒ぐ女性に、ローは本格的にため息をつく。
ロ)「欲しい物は服だけでよかったみたいだな」
女性はローの言葉に慌てると光に包まれ、別の女性改めクレアが姿を借りていた女性が現れた。
貴)「ごめんなさいごめんなさいっ
洗面具欲しいです!!!」
どうやら先程の綺麗な女性は入り口付近にいたモデルの姿を借りていたクレアだったらしく、急にいなくなったモデルの姿を探し、キョロキョロと辺りを見渡す第三者の姿も見れる。
しかしそれよりもローの機嫌の方を気にしなければならないクレアは、ローを軽く揺さぶりながら誤っていた。