第13章 差し引きゼロ
入ってすぐのホールでは人気のモデルが来てるらしく、入り口を潜るだけで一苦労だった。
ロ)「何が要る」
貴)「とりあえず服欲しいです…」
クレアの言葉にローは遠くから建物内図を見て店と階数を確認すると、roomを広げて一気に上の階へ登る。
貴)「おお…便利な能力」
ロ)「代わりにここにいた誰かは下に降りたけどな。
早く選んでこい」
貴)「え、ローも一緒に選んでくれるんじゃないの?」
ロ)「俺があの空間に入れると思うか?」
このフロアにある店は全てレディース向け。
店の中にいるのも女性ばかりで、とても海賊の野郎が背景にしていい空間ではない。
貴)「…はーい」
それでもクレアは納得しきれない顔で返事をすると、近くの店に入っていった。
ローはその後ろ姿を見届けると近くの椅子に腰をかけ、内ポケットからでんでんむしを取り出す。
少しのコール音の後、受話器が外された声を聞き、口を開く。
ロ)「何か手がかりはあったか?」
ぺ)『……』
ローはPENGUINと書かれた帽子を被るでんでんむしに尋ねる。
電話の相手は勿論ペンギン。
しかし通話が繋がっているのに返事が返ってこないことに眉間に皺を寄せた。
ロ)「おい、どうした。」
ぺ)『どうしたって…
船長、デートはいいんすか?』