第13章 差し引きゼロ
しばらく話をしながら朝食を食べていると、船内各部屋につけてある放送機から音が漏れる。
ぺ)『島が見えた。上陸まであと20分。
いつも通り船番は残るように。
仕事がある奴は忘れるなよ。
以上』
いつも以上に簡潔な放送を聞き、この状況下で何故慎重に話さないのか。
大体のクルーはクレアが聞いているからだと察する。
シ)「船長、クレアちゃんも島に?」
貴)「出たい!」
ロ)「…あまり進まないが。
おい、能力の使い方は覚えているな?
島に降りる前に見た目変えとけ」
貴)「へ?なんで?」
クレアは瞬きをして首を傾げる。
頂上決戦での記憶も無いから、海軍から狙われている記憶もあるはずがない。
シャチは狼狽えた目で船長を見るもローは平然とした態度で帽子を被り、口を開く。
ロ)「うちの決まりだ。
素顔はなるべく隠れる様にする。」
貴)「ああ、だから皆帽子被ってるのか」
ロ)「そういうことだ。」
シ)(よくもまあいけしゃあしゃあと…)
シャチがローの取って付けた様な理由にどうにか笑うのをこらえていると、
クレアは「そっか」と納得して片方の手を握り、何かを呟くと光に包まれる。
ロ)「…」
貴)「あれ、この人はダメ?」
ローの表情を見て首を傾げるのは、
見知らぬ女性。
貴)「東の海でコピーしたから絶対鉢合わせにならなくていいと思うんだけど…」
ロ)「好きにしろ」
どこか機嫌の悪いローに、容姿を変えたクレアは怪訝そうにもう一度首を傾げた。