第13章 差し引きゼロ
〜食堂〜
シ)「船長、クレアちゃん、おはようございます」
ロ)「ああ」
貴)「おはよう、シャチさん」
やっぱり慣れないけど、クレアちゃんが船長の隣で笑っているのが新鮮だった。
もちろん薬のせい、というのはわかっている。
けどそれを感じさせない程の自然体なクレアちゃんの笑顔が、
めったに笑わない船長の雰囲気さえ柔らかくさせる。
まるで能力のように。
シ)「クレアちゃん、朝ご飯どうする?」
貴)「じゃあパン食べようかな」
シ)「あー…、ごめん。
うちの船、パン置いてないんだよね…
……船長が嫌いなんだ」
少しだけ声を抑えて伝える。
船長のパン嫌いは俺たちの食生活まで変え(させられ)た。
うちの船には朝パン派が多く、パンを買ってきたら船長に、
「食うのは勝手だが主食は米だ」
と言われ。
恐らくご飯のおかずにパンを食べろという意味だろう。
そして当たり前の様にそれ以来船にパンが乗ることはなかった。