第13章 差し引きゼロ
〜操舵室〜
ローが開けた扉の音に進行方向を見ていたペンギンが振り返る。
ぺ)「おはようございます」
ロ)「ああ。」
ペンギンは本来の向きとは逆に座り直すとローを見てにやにやと笑う。
ロ)「…なんだ」
ぺ)「いやぁ、昨夜の営みはどうだったか気になって。」
ロ)「どうだっていいだろ」
ぺ)「何言ってるんすか、
野郎しかいないうちの船で女の子がいる上、一緒のベッドで寝たなんて…皆羨ましがってましたよ?」
ロ)「心底どうでもいいな。
どうせ演技だ。」
ぺ)「はあ…船長のセリフ聞いたらどいつも怒りますよ。
付き合うの誰でも良かったなら譲ってやりゃあよかったのに。
例えばシャチとか。
凄え心配してましたし。」
ロ)「あいつはすぐボロ出すからダメだ。
口が軽い所もあるが育ちのせいか根が良すぎる。」
ぺ)「まあ…海賊には向いてないかもしれませんね。
じゃ、俺とか?」
ペンギンは椅子から少し身を乗り出して自身に指を指し、にやにやしながら尋ねる。
ロ)「…すぐ調子に乗るのを治せたら考えてやる」
ローが呆れたようにそう言うと同時に大きな衝撃と共に船全体が大きく揺れる。
ペンギンが慌てて後ろ且つ進行方向である前を見ると、
恐らくぶつかったのか、巨大な魚がガラス越しにこちらを睨んでいた。
ぺ)「げっ、いつの間に…!」
ロ)「前見ねぇで無駄口ばっか叩いてるからだろ。」
ぺ)「船長ヘルプ…!」
ロ)「俺は今から飯だ。
お前なら1人でどうにか出来るだろ。」
そう言葉を吐き捨てるとローは踵を返し、操舵室から出て行った。
ぺ)「…ふふ、元から譲る気なんてないんだろ?」
ペンギンはローが出て行った扉を見て笑いながら呟く。
その直後、もう一度巨大魚に体当たりされて船が大きく揺れるもペンギンは冷静に操舵席に座り直し、舵を握る。
ぺ)「1番根が優しいのは誰なんだか」