第4章 不可解な夢と自分の力
久しぶりに両親の夢を見た。
物心がつくころには、私の側にはいつも父親がいたのを覚えている。私にとってそれは当たり前のことだったが、近所の子達はそれがおかしいと騒ぎ立てた。家には必ず母親というものがいるらしい。私は父親に母親のことを聞いたが、父親が見たこともないくらい悲しそうな顔をしたので、子供ながらに察し、もう二度とその話題はしなかった。
でも、私が1人で外で遊べるようになる頃には、父親も頻繁に家を開けるようになった。その間、祖母が親代わりとして私を育ててくれたが、その期間はあまり長くなかった。
祖母が病気で死ぬと、知らない男が私を迎えに来た。それがクロス元帥との出会いだった。母親はクロス元帥の直属の部下だと彼は無愛想に言った。彼は私のことがあまり好きではなさそうだったが、私の前でお酒やタバコをしなかったことから悪い人ではないという事は分かった。そして私は黒の教団へと迎え入れられた。
「……じゃあな。もう二度と会うこともないだろう」
彼はそう言うと、私の頭に手を載せた。彼が何か呪文のようなものを呟くと、眠気を覚えたが何とか我慢した。
「……フッ。いい女になれよ」
彼は私が眠気をこらえている様子を見て微笑み、その場から離れた。あとから思えば、私は彼の印象をなんだか悲しそうな顔をしている人と捉えていたと思う。その証拠に去り際に見せた笑顔もなんだか悲しそうだった。
初めて足を踏み入れた黒の教団は、恐ろしいところだった。彼と分かれた後放り込まれた、白いベッドと白い壁の他には何もない部屋。鍵はかけられていて、私には自由がなかった。唯一部屋から出れる時は、毎日行われる検査だった。しかし、そこで会う白衣を着た人達は私を冷たい目で見て、そして私が大人しくしてないと髪の毛を引っ張ったり怒鳴りつけたりするのだった。私は毎日、父親や顔も見たことがない母親を思い浮かべながら、泣き続けていた。
「もう大丈夫だよ。」
ある日、まだ検査の時間でもないのに部屋の扉が開かれた。帽子をかぶった人が私の前に座り、笑いかけてそう言ってくれたのだ。それがコムイ室長との出会い。室長は汚い私を抱き上げて、部屋から出してくれた。きょとんとしている私に笑いかけてくれたのは、室長の隣にいた班長だった。