第1章 ヒロインちゃんの零師団団長放棄理由
零師団の団長はもう歳が老いてきて、団長を辞退するという報告が入った。
だから最近、春雨が慌ただしかったのか。
私の自室で阿伏兎が説明してくれた。
『んで、私が第零師団の団長にねェ…』
「ああ 候補に名が上がってる」
私は第零師団の副団長だった。
副団長繋がりで阿伏兎と仲が良い。
渡された用紙にサインして、阿伏兎に渡した。
『でも第七師団の育成でしょ?もう根っから強いのにこれから何するのさ』
「新しく入団した奴らの、だろ」
『ふぅん。
あ、ところで、第七師団(阿伏兎のとこ)に可愛い夜兎さんが入団したって聞いたんだけど?』
「ああ 鳳仙が連れてきた弟子だと」
『へぇ!大変だねェその子も。幼くしてこんな海賊の船に乗せられるなんて』
あはは!と笑うと阿伏兎は冗談じゃねェと一言呟いた。
「あのガキ、俺に肩車しろだの煩ェんだよ」
『なんだ。ちゃんと父親やってんだ』
「ここは託児所じゃねェ」
『でもいい経験になるんじゃない?いつか阿伏兎もお父さんになるんだし』
「はァ?」
私はニヤリと笑って、阿伏兎に詰め寄った。
阿伏兎は反射的に後ろへ下がる。
『誤魔化すなよ〜私、知ってんだぞ!』
「何をだ」
『阿伏兎ォ、第四師団の団長とできてんだって?え?お?』
「はァ!?」
阿伏兎は頬を染め、目を丸くした。
勝ち誇ったようにこの〜!と阿伏兎の頬を人差し指で突っつく。
『ふふん。私の情報縄をナメちゃー困るぜ〜』
「オイオイ いきなり変なこと言うんじゃねェよ…誰から聞いたんだ」
『まぁまぁ。でも本当でしょ?なら阿伏兎がお父さんになる日は遠くない!』
「…はァ。ならねェよ俺ァ」
『えっ』
「どうもあの女は臭うからな」
『臭う?体臭が?』
「そういう意味じゃねェ。もっと別の意味だ」
まだお子ちゃまには早いな、と頭を撫でられ、阿伏兎はそのまま部屋を出ていってしまった。
『もうお子ちゃまじゃねーし!』