第2章 別れ
「初めて会った時……拙者が人斬り抜刀斎だという事を知っても薫殿は引き止めてくれた。"私は人の過去になんかこだわらない"そう言って……。すごく嬉しかった」
ズキン。
うるさい、心臓。
勝手に傷つくな。
わかっていたことじゃないか。
勝手に一人傷ついて泣くんじゃない。
「今までありがとう。そして……さよなら。拙者は流浪人。また……流れるでござるよ」
薫さんの身体を優しく抱きしめる緋村さん。
スローモーションに見えたそれは一瞬の出来事。
緋村さんはゆっくりと薫さんから離れると、暗闇の中に消えて行った。
聞こえるのは薫さんの悲痛な声だけで、私は木を背にその場にしゃがみ込んだ。
痛む脇腹を抑える。
傷つくとわかっていながら盗み聞きをしたのだ。
自業自得だ。
深く息を吐いた。
すると急にひどい眠気に襲われた。
だめだよ、こんなところで寝たら。
「!?」
そのとき聞き覚えのある声がしてゆっくりと目を開ける。
そこには血相を変えた左之助さんがいて、
『左之、すけさん……』
「お前この傷どうした!?おい、おい!!」
左之助さんの声が遠くなる。
そのまま私の意識はブラックアウトした。