第2章 with YOU (平川)
初めて入る平川さんの部屋。
モノがあまり無くて、広い部屋が余計に広く感じる。
リビングに進むと、大きな白いカーテンが風に揺れている。
「窓開けっ放しにしたんだった!」
床に落ちた漫画本を拾い上げて、テーブルに置く。
「平川さんって漫画とか読むんですね?」
「あ。うん。今度、このアニメに出ることになって。」
少し恥ずかしそうに視線を外し、漫画本を片付ける。
「紗友ちゃんが持ってきてくれたのが、これの続編。」
「重い物頼んじゃってごめんね。」
「いえ。大丈夫です!少しでも平川さんのお役に立てれば嬉しいですから。」
「ん?…そっか……ありがとう。」
満面に笑みに再び胸が苦しくなる。
「さて。何飲む?コーヒー?紅茶?日本茶?」
「えっと…紅茶で…」
「分かった。美味しく入れるから座って待ってて。」
「はい。」
少し離れたキッチンで、お湯を沸かし茶葉をポットに入れる平川さん。
手慣れた一連の動作に目が離せない…
バチッと目が合い、反射的に目をそらす。
「ん?どうかした?」
「いえっ。えっと…平川さんって原作とか読むんですね。」
「あー。うん。極力読むようにしてるよ。」
「どんな思いで、行動を起こしたとか、その発言をしたとか…」
「原作を読むことで、世界観を掴むんだ。」
「それに原作を好きな人にアニメは違うって少しでも思われたら寂しいし…さ。」
テーブルにティーカップを置き、呟くように答える。
「お忙しいのに努力家なんですね。」
入れたての紅茶に口を付ける。
「わぁ。美味しい!この香りすごく好きです!」
「ふふっ。お口に合って良かった。」
顔を少し傾けて笑う姿に私はすぐに視線をそらした。