第9章 ハレイロ(神谷)
仕事終わりのロッカールームで、帰り支度を整える。
「もしもし?美咲?」
「今、終わったんだけど…」
「うん。」
「今からだと、30分くらいかな?」
「それでも大丈夫?」
「じゃあ、すぐ向かうね~。」
「着いたら連絡するね。じゃあね。」
画面をタップして通話を終える。
今日は、友人の美咲との食事。
終わり時間がはっきりしない私の仕事。
『知り合いと飲んでるから、早く終わったらおいで』
最近多忙で誰とも会えなかった。
美咲から連絡が来たときは、すごく嬉しかった。
私は即答で『絶対行く!』とラインを入れた。
そう言えば…
知り合いも来るって言ってたけど、どんな人だろう。
ロッカーに掛けたエルメスのエプロンドールカレのスカーフを手に取り巻き直す。
最近、自分へのご褒美で購入したお気に入りのスカーフ。
ホワイトかブルーか悩んだ結果…
両方買ってしまった。
今日は、ホワイト。
「変じゃないかな…」
リップを塗り直し、フーッと大きく息を吐く。
「さて。楽しみましょ♪」
ひとり言を呟き、退社した。