第8章 グノーシス(KENN)
「お待たせ~。」
目の前に置かれたプレートを見て驚く。
フレンチトースト、サラダにベーコン、オレンジも添えてある。
「すごーーーい!美味しそう!!!」
「美味しそうじゃなくて、美味しいよ?」
得意気な表情が可愛い。
「写真撮っても良いですか?」
「オレも撮ろうかな~。我ながら良い出来だし(笑)」
カシャッ。
「うん。良く撮れた。ブログに上げよう♪」
フフンと鼻を鳴らす姿にクスッと笑ってしまう。
「さて。食べようか?」
「いただきます!!!」
「召し上がれ。」
1枚はハチミツを掛け、1枚はそのまま。
口に運んだフレンチトーストは、ふんわりしていて。
でも、カリッとしてて香ばしい香りが口の中に広がる。
「美味しい!あー幸せ~。」
両頬に手を添えて、目を閉じて味わう。
「いつもお料理作ってくれて、ありがとうね。」
急に言われた言葉に私は、驚き目を開く。
「え?」
「仕事でなかなか一緒にいれなくて、ごめんね。」
「もっと一緒にいたいのに…」
「KENNくん……」
「謝らないで下さい。」
「私は、お仕事に一生懸命なKENNくんが好きです。」
「KENNくんの歌が好きです。お芝居が好きです。」
「だから、これからも沢山お仕事してください!」
KENNくんは、一瞬キョトンとした後に微笑む。
「そうだね。これから先も紗友と一緒に過ごしていきたいし。」
「?」
「紗友の事も食べさせて行かなきゃならないしね。」
「へ?」
「結婚しようか。」
私は、驚き声が出ない。
「ダメかな?」
「ダメ…じゃないです…。」
鼻をすすりながらブンブンと顔を横に振る。
「あはは。そんなに泣かないでよ。」
「KENNくんも泣いてるじゃ無いですか…」
私たちはお互いの頬を流れる涙を拭った。
END