第7章 if(入野)
「止血止血!!」
足をソファーに上げ、ティッシュを探す。
「無い!!!」
「おかしいな…さっきまでそこにあったのに…」
「自由…足元に…」
「おわっ!気付かなかった…」
BOXからティッシュを引き抜き、傷口を押さえる。
「自由…そんなに大げさにしなくても大丈夫だよ…。」
「明日は、撮影でしょ?」
「うん…そうだけど…」
「これくらいの傷なら、既に血は止まってるだろうし。」
「…あ……そっか……。」
自由は、照れくさそうに頭をかく。
「…心配してくれて、ありがとう。」
私は、両手を広げて自由を待つ。
自由は、私の気持ちを汲んでくれて私の首元に顔を埋める。
私は、そっと抱きしめ呟く。
「自由。いつも私のことを想ってくれてありがとう。」
「どしたの?急に…?」
予想以上に驚く自由の顔に私は笑顔になる。
「最近、忙しくなったでしょう?」
「私が寂しく無いようにミューを連れてきてくれたし。」
「こうして、私がして欲しい事を言葉にしなくても分かってくれる。」
「私には勿体ないくらいステキな人。」
「恥ずかしくて、なかなか言えなかったけど…」
「今までもこれからも、ずっと好きよ。」
目を逸らして、顔を赤くさせる自由がとても愛おしくなる。
「オレだって…好きだよ…」
「紗友に負けないくらい…」
おでことおでこをくっつけて、ボソボソ呟く…
舞台やライブでは、観ることが出来ない私だけの特権。
私たちは微笑んで、どちらとも無く口づけをした。
「ミャー…」
少し離れた所で申し訳なさそうに覗うミューを呼び寄せて、私たちは床に寝転び揃って日向ぼっこをする。
「ね?自由…チョコの香りがする…」
「またポッケで溶けてるんじゃない…?」
「え…あっ…本当だ…」
「クスッ」
「笑うなんてヒドイよ~」
こんな風にこれからも陽だまりのような時間を過ごして行きたいな…。
END