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Season~声優さんと一緒~

第32章 wolf(八代)


「拓ちゃん…っ…痛い」

声を掛けても全く返答はない。

腕を掴まれて、引き込まれたエレベーター。

何階を押したのかすら微動だにしない背中に遮られ分からない。

「拓ちゃん…」

「怒ってるの?」

「………」

エレベーターのカウンターは、ぐんぐんスピードを上げて上昇。

この居たたまれない空間は居心地が悪い。

「拓ちゃん?」

何度か名前を呼ぶと到着を知らせる音。

開くと同時に外へ連れ出される。

再び強くなる掴まれた腕の痛みに振りほどこうと足掻くもののすぐに掴み直された。

「拓ちゃん!痛い!離して!」

少し歩くとカードキーでロックを外し暗い空間へ引き込まれた。


ようやく放された腕を擦り、抗議の視線を送っても暗闇では何も見えない。


「………の?」

小さすぎる声に耳を傾ける。

「え?」  

「何でここにいるの?」

「何で宏太朗くんと一緒なの?」

「意味が分からないんだけど。」

「こうちゃんが…拓ちゃんに」

「はぁ?こうちゃん?…いつの間にそんなに親密になったの?」

「その呼び方。オレ以外に使わないでよ。」

「何で…紗友ちゃんはそんな風に簡単に使うの?」

「オレにとっては特別なのに。」

「オレだけだって思ってたのに。」

「拓ちゃんっ…やめて…」

「何怖がってるの?」

「安心しなよ。たっぷり可愛がってあげるから。」

じりじりと追い詰められた先。

ふくらはぎにベッドが触れ、これ以上逃げられない。

「拓ちゃん!」

鼻先にかかる吐息。

アルコールを含んでるせいか、いつもの優しいたくちゃんがいない。

頬を伝う涙は驚きなのか悲しみなのか。

そんなのどうでもいい。

早くいつものたくちゃんに会いたい。

それだけなのに。

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