第31章 aquarium(中村)
「おやすみ。」
「聞いてるのか?」
「どうしたんだよ…ぼーっとして。」
「お子様は、早く風呂に入って寝る。」
「って…連れ回したオレが言える立場でも無いか。」
あはは。と笑って背中を叩かれた。
そう。
いつまで経っても変わらない現状ならば、いっその事壊したい。
シートに膝をつき、シャツの襟元を掴んで引き寄せた。
子供のいたずら。
そう思われたって構わない。
顔を傾け唇を寄せる。
「っ!」
唇に感じる痛みに鉄の味。
「っ…お前なぁ…痛ぇよ。」
ルームランプに照らされる中村さんは唇を親指で拭って、その指先を見つめる。
その視線の先を見つめれば鮮血が見てとれた。
情けなさで視界が滲む。
それでも構わない。
こんな関係…壊れたって構わない。