第3章 sniper (岡本)
かっきーさんのマンションの駐車場に車を止める。
「紗友さん?着きましたよ。」
一旦車外に出て、助手席のシートを上げる。
上半身だけ車内に入れて話しかける。
「んー………。」
「困ったなぁ…全っ然起きない。」
「もしもーし。紗友さーん。」
紗友さんの座るシートの端に右膝を付けて、近づく。
ギッ。
シートが軋む。
右頬にそっと触れる。
そして、呼びたかった名を紡ぐ…
「紗友…」
「ん…」
虚ろな目で俺を見つめる。
「徹也…さ…ん…?」
そう言うと同時に首に手を回される。
首元に吐息がかかる。
フワッとした香りが鼻腔をくすぐる。
……紗友さんの香りだ……。