第30章 ring(良平)
左手の薬指に夢中になって数十分。
「そんなに見てて飽きないの?」
業を煮やして声を掛けた。
「良平さんにも見せてあげますね?」
予想外の言葉に、また笑ってしまうよ。
「何言ってるの…オレも同じの付けてるしね。」
小さな左手に自分の左手を重ねる。
同じ光を放つ薬指。
「ほら。お揃いだ。」
そう言えば肩をすくませ、恥ずかしそうにする紗友。
思わず頬を寄せてしまうよ。
「苗字もお揃いになりますね。」
嬉しそうにはにかむ笑顔。
今、オレはきっと紗友にしか見せられない顔をしてると思う。
格好付けられない程、余裕が無いんだ。
それくらい頭も心も紗友でいっぱいなんだよ。
これから先も紗友はオレの特別。
オレも紗友の特別でいたいかな。
……なんてね。
………やっぱり今のは照れ隠し。
オレも紗友の特別でいたいんだ。
END