第29章 strawberry(梶)
空になったグラス。
そのグラスを見ながら、何度も何度も「美味しかった。」と呟く紗友ちゃん。
これを機に、もう少し距離を縮めたいんだ。
「ね?」
「紗友ちゃんに聞きたいことがあるんだ。」
「何でいつも苗字で。しかも『さん』呼びなの?」
「え?」
「こうして二人で出掛けるのに、ずっと『さん』呼びだと距離を感じるなー。」
「…それでは、何と呼んだら……?」
「んー。そうだなぁ。名前で。」
「ね?呼んでみて?」
「え…急に名前は…敷居が高いです!」
「えー。下野さんの事は『紘くん』って呼ぶのに?」