第29章 strawberry(梶)
梶さんが食べてくれた。
空になったスプーンを見つめると頬が緩む。
「紗友ちゃん?」
名前を呼ばれ顔を上げる。
「はい。あーん?」
今度は逆に差し出されるスプーンの先にはアイスクリームとイチゴソーダ。
多分、さっきの逆を求められているのは明らか。
「え…いいです…」
「えー?差し出したこのスプーンを下げる事なんて出来ないんだけど…」
苦笑いする梶さん。
「そ…そうですよね…」
スプーンを指先で持ち、パクッと口に含む。
口に広がるさっぱりしたソーダの味。
冷たいアイスクリームと混ざり合って自然と頬が緩む。
「ここのデザートは間違いないですね。」
恥ずかしさを隠すために口数が増える。
「本当に美味しい。」
「梶さん。ごちそう様でした。」