第29章 strawberry(梶)
『イチゴ』と言うフレーズをこんなに色っぽく言える人を私は知らない。
見せびらかす為に差し出したフォークを持った手首を掴まれ、大きな口でイチゴを頬張る。
唇の端にはイチゴの果汁と潰れた果肉がつく。
その果肉を指先で拭い舌先で舐めとった。
仕草一つ一つが妖艶で目で追ってしまう。
最後に親指についたイチゴを舐めながら、視線を下に落とす梶さん。
「んー甘い…。」
チラリと私を流し見る視線。
目が合いようやく我に返る。
視線が合うと咄嗟に逸らしてしまう。
視線を逸らした、ちょうど先のフォークの先を見つめれば……
「私のイチゴ…」
「んー。やっぱり格別だよねー。」
「ごちそう様でした。」
頬杖をついて、ニッコリ笑う。
「私のイチゴ…」
眉を寄せてフォークの先の残りのイチゴに唇を付けた。
「イチゴ……」