第27章 sound(櫻井)
食事を終えて、まったり過ごす。
櫻井さんの隣に座って、本を読む。
カレは台本。
私は来る途中に買った小説。
言葉を交わさなくても一緒にいられるこの時間が好きだったりする。
「雨?」
ふと声を掛けられて、窓の外に視線を向けた。
窓には叩きつけるような雨。
「そう言えば、来るときに黒い雲がありました。」
「いつの間にこんなに降ったんでしょうね?」
「気付かなかったな。」
そう言って再び台本に視線を落とす。
「コーヒーでも入れますか?」
「ありがとう。でも大丈夫。」
優しそうに笑う笑顔に咄嗟に視線を逸らす。
「そう言えば、紗友って俺が笑うと視線逸らすよね。」
「え…」
「ほら。ファストフード店で働いてた時にもさ…。」
「そう言えばあの時も雨降ってたよね。」