第25章 obediently(入野)
「紗友?」
「自由くんって冬に帰国するの?」
「え?」
「だって。ほら。」
友人の彩美華から差し出されたスマホの画面には、冬に上演される舞台の情報が表示されていた。
スクロールされた先に映し出された出演者の名前に息をのむ。
『入野自由』
言葉に詰まる。
知らない。
こんなに待ち焦がれてるのは私だけなの?
情けなくて泣けてくる。
何となく気付いてはいたの。
やっぱり私は必要とされてないって。
帰国が恐い。
面と向かって別れを切り出されたどうしよう。
電話番号も変えた。
ラインも辞めた。
メアドも変えた。
別れを切り出されるくらいなら………
私は自分から身を引くの。
卑怯な事してごめんなさい。
直接言われたら立ち直れる自信が無いの。
逃げる私を許してください。