第25章 obediently(入野)
こっちでの生活も慣れて、友人も出来た。
極力日本人とは関わらないように。
何のためにココに来てるか目標を失わないように。
日本程の季節の変化は感じられないけど、あっという間に時間が過ぎているのは実感する。
紗友とは、連絡はするものの電話なんてしない。
お互いを考えて…
なんて嘘。
ただ。恐いだけ。
紗友からも電話なんて掛かってこないし。
必要とされてないんじゃないか。
別れようって言われるんじゃ無いか。
臆病な自分はこっちに来ても変わらない。
少しは成長してるのか。
不安で仕方ないけど、悩んだところで何も変わらないし。
見上げた空は、何処までも続く青空。
この空は日本とも繋がってる。
この時間、同じ空を見上げてたらどんなに嬉しいか。
「紗友…キミのことが好き過ぎてツラいよ。」
「早く触れたい。」
「抱き締めたい。」
目の前に居なければ、こんなにすんなり言えるのに。
帰国までに少しでも勇気がつけばいいけど。
さて。
キャップを深くかぶり直し、人並みをかき分けながら歩みを進めた。