第25章 obediently(入野)
『頑張ってね。』
キミはいつも何を考えてるの?
俺がいなくても平気なの?
少しくらい引き止めて欲しい…なんてワガママだよね。
俺は、いつもワガママばかり。
キミは、いつも諦めたみたいに微笑む。
その微笑みがツラいときもあるんだよ。
「良かったぁ。紗友に泣かれたらどうしようかと思ったんだよ。」
キミの涙。見たこと無いな。
「本当に紗友は、俺の事分かってくれるからすごく楽。」
情けない俺から離れず、そばにいてくれる。
俺はいつもワガママばかり。
「それまで、こっちで待っててくれる?」
いつ帰ってくるか分からないのにキミは待っててくれるのかな?
不安な気持ちが声に表れてないといいんだけど。
「もちろん。私も自由が驚くくらいの成果を見せてあげるから。」
精一杯平静を装って笑ってみる。
ちゃんと笑えてる?
ね?紗友。
強がるのも限界かもしれない。
これ以上情けない顔見せたくないよ。
「紗友。抱き締めてもいい?」
逃げるように言葉を発する。
そう言えば、紗友は抱きつき俺の背中に腕を回し抱き締めてくれる。
もう笑えないよ。
涙が零れないようにキツく瞼を閉じた。
鼻腔を擽る紗友の香り。
いつもより強い腕の力に戸惑う。
「紗友?ちょっと痛いよ。」
戸惑いを隠すように笑ってみても紗友は何も言ってくれない。
少し震えてる気がしたけど。
俺の思い過ごしかな?