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Season~声優さんと一緒~

第25章 obediently(入野)


「紗友?」

「ん?」

「俺さ。アメリカに行くんだ。」

「そうなんだー。いつ?」

「1月下旬には。」

「ふーん。アバウトな予定だね。イベントか何か?」

「いや。」

「まさか収録?撮影?人気者さんは、とうとう国外で…さすが入野様。」

顔を上げて、冷やかしながら笑ってみても自由は真剣な顔で私を見つめる。

「仕事じゃないよ。」

「勉強しに行くんだ。いつ帰国するかは決めてない。」

「え?ちょっと待ってよ…何言ってるの?」

「前みたいに1年とかって決めてるんでしょ?」

「うぅん。決めてない。」

「キラフェスだって、参加しないよ。」

「来年の日本での仕事も一切入れてない。」

戯けて私を笑わせてくれる自由はいない。

瞳をみれば、それだけで分かるよ。

もう決めたのね。

その答えを出すために、きっと沢山悩んだはず。

私に出来る事。

物分かりの良いフリをするだけ。

貴方の重荷になりたくないの。

「そ…そう……自由は役者さんだもんね。」

「頑張って。」

私の声は震えてない?

「自由が決めた事なんだから、私は応援するよ。」

視界は、まだぼやけてない。

「良かったぁ。紗友に泣かれたらどうしようかと思ったんだよ。」

「本当に紗友は、俺の事分かってくれるからすごく楽。」

それ以上何も言わないで。

視界が滲む。

「俺さ。一回りも二回りも大きくなって帰って来るからね。」

「それまで、こっちで待っててくれる?」

口角を上げて笑って頷く。

「もちろん。私も自由が驚くくらいの成果を見せてあげるから。」

ニカッと笑う自由。

ね?そろそろ限界かもしれない。

涙が零れそう。

貴方を困らせてしまう。

少し俯き唇を噛む。

「紗友。抱き締めてもいい?」

そう言われて、私は抱きつき背中に腕を回した。

これで大丈夫。

瞼を閉じれば頬を伝う涙。

呼吸は浅く。

深く吸ったら震えてしまうから。

貴方の温もりを忘れないように。

「紗友?ちょっと痛いよ。」

笑う自由の声は、いつもと変わらない。

自由。

貴方が好きすぎてツラいの。

貴方に嫌われたくないからいつも口をつぐんでしまう。

貴方が日本を離れるまで、物分かりの良い子でいられるかな。

もう一度強く抱きしめた。
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