第3章 sniper (岡本)
「紗友…これ…」
そう言って、かっきーさんは紗友さんの首元に巻かれた緑のストールに軽く触れる。
「うん…」
耳を赤くさせて、紗友さんはかっきーさんを見つめる。
この二人は視線で会話出来ちゃうんだな。
そこだけ柔らかい空気に包まれる。
そんな雰囲気。
分かってはいても、実際見るとキツいなぁ…(笑)
楽屋に来て、十数分…
次から次に沢山の人が出入りしている。
「紗友。悪い…これから打ち上げだから…一人で帰れるか?」
少し申し訳無さそうに、かっきーさんが紗友さんに話しかける。
「大丈夫だよ。一人で来たし!」
会話の隙間にサッと割り込む。
「あの!オレ、車で来たんでかっきーさんの家まで送りましょうか?」
「え?」
汗を拭きながら、かっきーさんがオレに話しかける。
「おー。ノブ…悪ぃけど頼めるか?」
「任せてください!責任持って送り届けます!」
言い終わった後に笑顔になる自分を感じる。
「ノブ~悪ぃな~。オレも乗っけて~。」
良平さんがオレの肩を掴む。
「え!?」
咄嗟に声が出る。
「何だよ。不服そうだなぁ?」
全てを見透かすような視線に、オレは視線を下に落とす。
「いや…そう言う訳では…」
「良平さんもご一緒出来るんですか?楽しい時間になりそう~。」
紗友さんの無邪気な声にため息をつく。
「では、徹也さん。打ち上げ楽しんで下さいね。」
オレたち三人は、まだ騒がしい楽屋を立ち去った。