第16章 線香花火(蒼井)
「着いたよ。」
サイドブレーキを踏んで、停車する。
先程よりは、少し弱くなった雨。
「まだ降ってますね。」
「うん。でも、きっと止むよ。」
どこからこの自信が来るんでしょう。
不思議で仕方ないです。
「花火買ったんですか?」
「うぅん。貰ったの。」
後部座席に置いたバックから、ビニールに入った花火を取り出す。
「線香花火ですか?」
「うん。そう。」
「えっと。他には…?」
「これだけだよ?」
キョトンとした顔に、此方もキョトンとする…。
「えっと…」
「線香花火なら…もっと近場でも良かったのでは?」
「えー。つれないなぁ。」
「海で線香花火なんて、雰囲気あるでしょう?」
「はぁ…」
私のため息なんて、お構いなしに楽しそうな蒼井さん。
「おっと。止んだみたいだよ?」
「行こうか。」
そう言うと、そそくさと車外へ出てしまった。
「もう……」
本当に自由人。
この人は…。
もう一度、大きく息を吐き出し私も車外に出た。