第15章 cushion(梶)
「く…く…くくっ…」
「あははは!」
「もう。ダメ…あはははは!」
「何!?」
「色気のない声だなぁ~」
その言葉に涙腺が崩壊した。
いつもの梶くんだ…。
「ちょっと!何で泣くの!?」
「だってっ…」
「いつもの梶くんじゃ無いみたいで…」
「怖かったんだもん。」
「あーん。梶くーん!」
両手を広げて、愛しい人を迎える。
「ごめん。ちょっと意地悪してみたかったんだよ…。」
そう言うと、梶くんはソファーに埋もれる私の上に覆い被さる。
「ビーズだから、どんどん埋もれるね?」
何だか楽しそうな声に安心する。
手を伸ばし髪を撫でる。
少し弾力のある髪質。
フワフワしてて私が好きな感触。
少し汗ばんだ頬に首筋。
落ち着く梶くんの匂い。
全てが愛おしい。
「梶くん…大好き」
「僕も大好きだよ。」
耳元で囁かれた言葉は、さっきとは違い私の心を溶かす。
「今度は、顔が見える状態で言って欲しいな?」
「え…面と向かってなんて恥ずかしくて無理だよ。」
顔を横に向けると、真っ赤な耳が動揺を教えてくれた。
「さて。そろそろ…」
「あれ…起き上がれない…」
「紗友ちゃん!」
「どうしよう…冗談抜きで、このソファーから抜け出せないかも…」
「だから、言ったじゃないー!」
私達は逃れようと必死にもがきながら態勢が変わる度に声を上げて笑った。
その後、二人でジタバタしながら汗だくで何とかソファーから脱出。
抜け出せないのは辛いけど…
病みつきになりそう。
だって…梶くんとこんなに密着出来るなんて。
病みつきにならないはずがない……。
END