第13章 上富夢(遊佐)
「では無いかな。」
「うん。」
「迷惑では無い。」
!!!
『迷惑では無い』
その言葉に、再び涙が溢れる。
「何で泣いてるの?」
あたふたする遊佐さん。
そんな姿に自然と笑みがこぼれる。
「泣いたり笑ったり、キミは忙しいね。」
そう言って、遊佐さんは私の顔を覗き込む。
遊佐さんの吐息が私の頬に掛かる。
「今更だけど、名前は?」
「ね?聞かせてよ。」
「桐島紗友…です。」
掠れた声で、小さく呟く。
「紗友か。良い響きだね。悪くない。」
自分の名前を呼ばれるのが、こんなに嬉しい事だなんて知らなかった。
頬が緩む。
「紗友は、笑った方が良いと思うよ。」
頭をポンポンと撫でられ、顔が熱くなる。
「今度は赤くなる。」
「ね?僕のこと好きにさせてみてよ。」
「紗友が、どんな手段を使うか。お手並み拝見といこうかな?」
「クスッ。面白くなりそうだ。」
ニヤッと笑った顔にゾクッとする。
私…なんて人を好きになっちゃったんだろう。
これから先、私…
どうなっちゃうんだろう。
END