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Season~声優さんと一緒~

第12章 for You…(前野)


「ごっごめんなさい!」

バッと後ろに下がる。


「クックックックッ」

「あはははは」

「紗友ちゃん面白いね。」


「そんなに笑うこと無いじゃないですか!」

「もぅ…」

むぅっとふてくされた顔になる。


「ごめんごめん。タツが放っとかない訳だと思ったんだよ。」

「……タツには、相手にされてないもん…。」

視線を落とし、俯く。



またか…。

やっぱりこのコは、タツが好きなのか。



「さて。そろそろ送るよ。」

「あっ…ありがとう。」


車の中では終始無言。


タツの事でも考えてんのか?

チラッと盗み見るものの、一点を見つめて微動だにしない。

強いて言えば大きなため息が数度聞こえたくらい。


紗友ちゃんの家の近くで車を止める。

「ありがとうございました。」

「わざわざ送って頂いちゃって、すみません。」

「いやいや。いいよ。俺がやりたくてやってるんだから。」


「じゃあ。」
そう言って、車から一歩後ろへ下がる。


俺は大きく深呼吸をして、ドアを開け車外に出る。

「?」

紗友ちゃんは、少し戸惑っているようだ。

目の前で立ち止まり、上半身を屈めて声を掛ける。


「ね?紗友ちゃん。俺にしない?」

「え?」

「タツには『手を出すな』って言われたけど、我慢出来そうにないかな。」



耳元でトーンを落として、数時間前に紗友ちゃんが反応したセリフを囁く。

「愛してる」


こんなやり方卑怯かな(笑)



目を丸くさせて、顔を真っ赤にさせる紗友ちゃん。

こんなこと言うのは、俺らしくないけど。

今回は、頑張ってみようかな。


「紗友ちゃん。覚悟しててね。本気だから。」


ニコッと笑って、髪を撫でた。


タツには絶対バレたくないけど。




車に乗り自宅へ戻る。

部屋に入り、我に返る。

「俺は…何てこと言ったんだ…」

自分で自分が恥ずかしい。

でも…たまには自分の気持ちに正直になるのも悪くないかな。




END

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