第12章 for You…(前野)
ピーンポーン。
ドアを開け出迎える。
「いらっしゃい。」
「本当に急にごめんね。これ。お土産。」
そう言って、ケーキボックスを渡される。
「プリンが入っております。」
「サンキュー。」
「では。おじゃましまーす。」
リビングに招き入れ、ソファーに座らせる。
「飯…まだ、だろ?」
「あ。まだだけど…お気遣い無く。」
そう言い終えると同時にグーっと言う音が聞こえる。
「あはは。デカイ主張だな。」
「うっ…すみません…」
「オムライスくらいしか作れないけど、それで良いか?」
「申し訳ないです。」
「何かお手伝いを!」
「観たい番組があるんだろ?それ観てて良いよ。」
「何から何まですみません。」
「それで、何観るの?」
「アメイジング・スパイダーマン2。」
「!!!」
「まだ観たこと無くて。楽しみ♪楽しみ♪」
「前野くんも一緒に観ようよ。」
「いや…」
「え?もしかして…観たことある?」
観たことって言うか…吹き替え…俺だし。
言えないけど。
「さて。オムライス作ってくるよ。」
俺は、リビングの扉を閉めた。