第11章 VOICE(達央)
「鳥海さん!もうアイツ無理っす!」
声のする方を振り返る。
呆れる浩輔。
キョトンとする前野。
「さて。俺はそろそろ帰るよ。」
「自宅で作業しなきゃいけないからね。」
「じゃあ。桐島さん。現場で。」
イスから立ち上がり、軽く手を挙げる。
「あ。そうだ。」
もう一度屈み、左の顎に手を添えられる。
親指でスッと頬を拭う。
「!?」
「消毒(笑)」
「達には、後で謝らせるから。」
「じゃあ。」
そう言って、諏訪部さんは店を出て行った。
私は、椅子にもたれて口をパクパクさせるしか出来なかった。