第2章 ~第一章~二人の想い
――1年前―…
―ゼノside―
(ふぅ…さすがにこれだけ毎日公務に追われていると疲れるな……)
若くで王となったゼノは公務をこなすのには慣れていたが、寝る時間もほとんどない程の大量の公務がしばらく続いていたためさすがに疲れを感じていた。
(……それに何より、ユヅキと一緒にいる時間をあまりとれないのは辛い…)
そう思い、溜め息をついたと同時に執務室のドアがノックされた。
――コンッ、コンッ―…
「どうぞ」
――ガチャッ―…
ドアが開かれるとそこには官僚が一人立っていた。
官僚「ゼノ様、お忙しい中、失礼します。」
「どうした」
書類に目を向けたまま、素っ気なく用件を尋ねるゼノを真っ直ぐと見つめて官僚は口を開いた。
官僚「その…公務もお忙しいとは思いますが、婚姻されてからかれこれ2年程経ちますが…お世継ぎの件はどのように考えていらっしゃるのでしょうか…?」
(……またか…)
最近、他国から届く手紙にもお世継ぎの件について書かれていることが多く、周りから早く世継ぎを、世継ぎを、と急かされていることにゼノは少し嫌気が差していた。
「今のところ世継ぎを設ける気はない。」
(ユヅキも俺も公務に追われていて、夫婦二人でいる時間もまともにとれていないからな)
ゼノが冷たく応えると官僚は少し語気を強めてゼノへと意見した。
官僚「しかし、このままではシュタインもウィスタリアも現状維持のままです!!更なる街の繁栄のためにはお世継ぎが…っ!!」
「…とにかく今は世継ぎを設ける気はない。下がれ」
ゼノの迫力に負けた官僚は、納得のいかない顔をしつつも黙って出ていったのだった。
(ふぅ…街の繁栄のために世継ぎを…か…)
そしてゼノは将来、授かるであろうユヅキとの子を想像して口元をふっと綻ばせた。
(ユヅキに似れば、きっと優しくて可愛い子になるだろうな)
(……ユヅキは世継ぎについて、どう思っているのだろうか…)
そう思いながらまたゼノは書類へと目を落としたのだった。