• テキストサイズ

【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第8章 GW合宿 2日目


「……は、い…」

「俺に出来る事は少ないかもしれないけど…話ならいつでも聞くから。愚痴でもなんでもいいからさ。ほらよく言うだろ、話せば少しは楽になる、って」

穏やかな旭先輩の声が胸に染み込んでくる。
顔を見ればいつもの優しいふにゃっとした笑顔の旭先輩。
その顔を見て、私の心が一気にふっと軽くなった。
旭先輩はすごい。
その笑顔1つで、私の心をこんなにも軽くするんだもの。

「…はい。聞いて欲しい時は、ちゃんと、言います。その時は、聞いてもらっても、いいですか」

「もちろん。いつでも構わないよ。…よかった、ちょっとは落ち着いたかな」

「はい、だいぶ。…心配かけてすみませんでした。」

「気にするな。俺が勝手に気にしただけなんだから」

ぽんぽんと肩を叩く旭先輩の顔はいつもにもまして優しくて、私の涙腺はまた崩壊しそうになる。
瞳がゆれるのをなんとか堪えようとしているのが分かったのか、旭先輩がまたあたふたと慌てふためきだす。

「すみません、ちょっと今涙腺が弱くなってて!」

「いいよ、気にしなくて。…泣いたらスッキリするんじゃないか?」

「う、でも泣き顔見られるのは恥ずかしいです…!」

「あ…そ、そうだよな……。……ん」

一瞬、何が起こったか分からなかった。
石鹸の匂いと人肌のぬくもり。
顔に触れているのは、旭先輩のTシャツで。
今自分が旭先輩に抱きしめられているのだと理解した時には、体中の血が顔に集まった気がした。

「…っ?!あ、あしゃひせんぱ…?!」

恥ずかしさと緊張のあまり、思いっきり噛んでしまう。
旭先輩の体が小さく揺れた。

「思いっきり、泣いていいから」

少しだけ、抱きしめる力が強くなった気がした。
びっくりして引っ込んだと思っていた涙が、旭先輩のその一言で堰を切ったように溢れ出てくる。
じわりじわりと旭先輩のTシャツを濡らしていく涙。
申し訳ないとか恥ずかしいとか、そんなものはどこかへ吹っ飛んでいた。

ただ旭先輩の優しさが痛くて、ただただ涙を流したのだった。
/ 460ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp