第42章 シロツメクサ
夜久と東峰のどちらが優勢なのかなんて、赤葦には見当もつかなかった。
ただ何となく、学校が同じである東峰の方が、黒崎と接する機会も多いだろうし、有利なように思えた。
「……東峰さん、ですかね」
「だよなぁ」
赤葦は黒尾の返事を意外に思った。
赤葦が夜久だと答えなかったことを黒尾は全く気にしていないようだったから。
「黒尾さんも東峰さんだと思うんですか。夜久さんじゃなくて」
「やっくん、必死すぎなんだよね。あんまり押せ押せだと引くじゃん女の子の方もさ」
「……夜久さん、黒崎さんとは学校違いますし。住んでる場所も宮城と東京ですから、合宿中、押せ押せになるのも仕方ないと思いますけど」
「そうなんだけどさー…なんつーのか、余裕の無さがにじみ出てるっつうか」
「なぁなぁ、お前らさっきから何のハナシしてんの???」
いまだ2人の話を理解していない木兎が黒尾と赤葦の顔を交互に見やる。
黒尾も赤葦もチラとだけ木兎と目を合わせて、すぐに視線を外した。
「どっちに転ぶのかねぇ」
黒尾はポツリと呟いて、ペットボトルの中身を一飲みした。
赤葦が見やった体育館の外には、シロツメクサが月明かりにぼんやりと浮かんでいた。