第40章 落ち武者は薄の穂にも怖ず
東峰がジャージの裾に目をやると。
そこには、白く小さな手形がくっきりと浮かび上がっていた。
まるでジャージの裾をギュッと握りしめたかのような手の跡だった。
それも小さな子供の。
ー『子供のユーレーも見たんだよ』ー
昨夜の木兎の言葉がふっと頭をよぎる。
まさか、これは、木兎の言う子供のーー?
それではあの時。
黒崎が俺の手を掴む直前、ジャージの裾を引っ張っていたのは……
黒崎ではなくてーー
「おわっ?!旭さん?!」
「旭?! おい旭、しっかりしろー!!」
急に気を失った東峰を抱え叫ぶ菅原の声が、校内に響き渡った。