第39章 合宿3日目
『…あれからどうしてたのか、ずっと気になっていたのよ』
おばさんの言葉が、だめ押しのように聞こえた。
やっぱり直接会って、きちんとお礼を言わなくちゃ。
黙っていなくなって不義理だった私を、私達家族の事を気にしていてくれた衛輔くんの家族に、今こそ礼を尽くさなければ。
「私も、おばさん達にはちゃんとお礼を言わなきゃって、思ってました」
私の言葉を横で聞いていた衛輔くんの目が大きくなった。
「美咲ちゃん、それって」
静かに頷いてみせると、衛輔くんの顔がぱぁっと明るくなっていった。
その顔は、子供の時となんら変わらない、明るい笑顔だった。
『ありがとう、美咲ちゃん。お父さんも喜ぶわ。じゃあ金曜日、合宿が終わる頃にそっちに迎えに行くわ。先生達には私が電話で事情をお話しするから』
「すみません、ご迷惑おかけします」
『迷惑じゃないわよ。私達の我が儘聞いてくれてありがとう、美咲ちゃん』
「我が儘だなんて、そんな。…私の方です、我が儘言っていたのは。お誘いいただいたのに、行かないだなんて断っちゃったから……」
あの時は、祖母とのことがあったばかりで。
タイミング悪く衛輔くんの言葉に必要以上に引っ掛かってしまって、素直になれなかった。
それなのにそれを咎めもせず、許してくれた衛輔くんやおばさん達のことを思うと、恥ずかしくて穴に入りたくなる。
『美咲ちゃんも今の学校で一生懸命頑張ってるって衛輔から聞いてたから。いいのよ、気にしなくて。会えるのを楽しみにしているわね』
おやすみなさい、と挨拶を交わして、通話を終える。
携帯を衛輔くんに返すと、衛輔くんは嬉しそうに微笑んでいた。
「ありがとう美咲ちゃん。…でも、母さんに遠慮したんじゃねぇか? 前誘ったとき、頑として拒否してたのに」
「ううん、遠慮したんじゃないよ。ただ、前誘ってもらった時とは、ちょっと心情の変化があっただけ」
「ふぅん。そうか。まぁなんにせよ嬉しいわ。母さん達もだけど、俺も色々ゆっくり二人きりで話したいことあったし」
合宿中も、それ以前でさえ衛輔くんとはよく話をしていたのに。
それでもまだ、衛輔くんには話したいことがあるらしい。
“二人きりで”
その言葉がいやに耳に残った。