第39章 合宿3日目
差し込む朝日に目を開ける。
合宿3日目の朝がきた。
昨夜、雀田さん達に旭先輩を好きなことがバレてしまった。
隠していたのに、やっぱり私はウソが苦手らしい。
鋭い雀田さん達の目からは逃げることは出来ず……なんだかんだ、あらかたのことを話す流れになった。
話し終えると、雀田さん達の口から全く同じ言葉が出てきた。
『……それって、結構脈ありなんじゃない?』
もちろん、私の主観が入った上での話だから、雀田さん達の言葉が正しいとは限らないけれど。
他校の、全くの第三者からの客観的な意見が聞けて良かったと思う。
春高が終わるまで、これ以上どうこうするつもりはないけど。
少しずつ明るく見てきた未来に、頬が緩みそうになる。
にやけそうな顔を押し込めつつ、今日から動き出すために準備を始めた。
「潔子先輩、私武田先生のところに行ってきます」
先輩にそう言い残して、1人、先生の元へ向かう。
渋る武田先生に必死で訴えて、今日からマネージャーの仕事を再開させてもらった。
あまり動き回らず、主に得点板の係をするという条件付ではあったけれど。
それでも1日保健室で休んでいることに比べれば、ありがたかった。
色んなチームの試合を眺めることも出来たから、何か少しでも烏野のみんなの為に吸収できることがないか、どの試合にも目を凝らした。
今日もまだ調子が上がらないのか、烏野は負け越してばかり。
だけど、誰も下を向いてない。
負けても、毎試合毎そこから何か掴んでいる、そんな様子だった。
何度目かの試合で、烏野と音駒の試合が始まった。
序盤は、烏野がリードしていたものの、徐々に点差が詰められていく。
「旭、ナイッサー」
澤村先輩の声に続けて、部員達が旭先輩にエールを送る。
ホイッスルの音が鳴る。
旭先輩は息を吸い込むと、ボールを投げ上げて軽く助走し床を蹴った。
ボールを叩くいい音がして、勢いよく相手コートへとボールが飛んでいった。
勢いそのまま、旭先輩のジャンプサーブは相手コートのエンドラインをわずかに越えて床についた。
「ドンマイ、次々!」
菅原先輩が声を飛ばす。
旭先輩は悔しそうに舌打ちをしていた。
最近ずっとサーブの練習をしてた旭先輩。
試合で使い物にならなきゃ意味がない、って言って毎日必死になってた。
この合宿は、練習の成果を試すまたとない機会だ。