第7章 日曜日
「それは先ず綾雁さんに話しますよ」
「ハハハ、そらそうだな。・・・・河合」
「え?」
反射的に熱視線を向けてきた河合に全蔵は苦笑した。
「お前は本当に相変わらずだな。力が抜けるぜ」
「そう言われましても、自分では何が相変わらずなのかさっぱり・・・」
「見損なわずにすんで安心したってんだよ。付き合わせて悪かったな。早く戻れよ。近藤が心配する」
首を傾げながら立ち去る河合を見送ると、全蔵は両手を広げて後ろ向きに柵に寄り掛かって空を見上げた。
「明日の見舞いにゃジャンプを持ってきてやるよ。ちゃんと読めるヤツな」
「燃やしたりヤスリかけたりしなきゃ切れない縄で括られてんだろ?読めねえよ」
風にはためく洗濯物の陰から銀時が姿を現した。
「あのボロボロのヤンジャン、ヒゲ子に返品したヤツだよな」
「ん?病院の図書スペースに寄付されてたからよ。ちょっとどんなモンか色々試してみたんだな」
懐からもうひとつイチゴ牛乳を引っ張り出して銀時に放ってやりながら、全蔵は苦笑する。
「手強いねえ。流石息も出来ねえとこで使われてる縄は一味違うわ。ありゃ立ち読みも大仕事だ」
「立ち読みじゃなくても往生すんだからな。何考えてんだか、ヒゲ子さんは」
「自分じゃ読まねえらしいから頓着しねえんだろうなあ。全くお姫さんの世間知らずも大したモンだ。ジャンプも知らねえってんだからよ」
銀時が景気よくイチゴ牛乳を噴いた。
「ィだだッ、鼻、鼻にイチゴ牛乳・・・・だだだッ、鼻あっま・・・・ッ、イデデデ、鼻ツンする、鼻ツンッ」
「鼻で呑むなよ。どんだけ好きなんだ、イチゴ牛乳」
「バッカ、今のは事故だ。明らかな事故だよ。流石の俺も鼻で呑むほどイチゴ牛乳に全てを捧げちゃねえよ。鼻は生涯嗅ぐのに使うつもりだからね。転職の予定は無し。いくらイチゴ牛乳でもそこまで好き勝手な真似はゆるさね・・・イヅヅ・・・カハッ、あー、鼻あっま~」
「・・・・ホントしょーもねえな」
「うるせえ。ジャンプも知らねえで本屋でバイトするよりゃマシだ」
「まあなあ。すげえよなあ」